小型直流モーターを世界5極事業体制で年13億個供給【マブチモーター株式会社】
モーター製品の標準化戦略
マブチモーターは、小型直流モーター専業メーカーとして小型・軽量・高効率のモーターを世界5極事業体制で年間約13億個生産し、自動車電装機器をはじめ家電や事務機器など幅広い用途に提供している。その強みは顧客が求める価値を徹底して考え、その価値を実現する高品質のモーターをリーズナブルな価格で提供する「標準化戦略」だ。幅広い用途で標準品として使われるデファクトスタンダードの地位を獲得することによって、1モデルあたりの生産量を飛躍的に拡大し、安定した高い品質を実現。しかも、自社の生産設備や工程を各地域で共通のものに標準化し、人員の教育・訓練を効率化して海外に展開しているため、現在は製品のほぼ全量を海外で生産している。
製品も生産工程も「標準化戦略」で高品質をリーズナブルに
●標準化戦略ベースにEVやロボット、ソリューション提供へ拡大
●1年目から海外研修、異動希望申告制度もある「エンジニアが輝く会社」
自動車電装機器用で安定した高いシェア。産業機器用、健康・医療用で事業領域を拡大
モーターの納入先は、ドアロックやドアミラーなどの「自動車電装機器用」が約80%を占め、世界シェア8割以上を誇る製品を持つ。残りが家電から産業機器まで幅広い「ライフ・インダストリー機器用」。供給する製品の種類は極めて幅広いが、標準化戦略の強みにより、約100種の基本モデルですべての用途に対応している。ライフ・インダストリー機器ではこれまでの用途に加え、Mobility(AGV・AMRや移動体用)、Machinery(協調ロボットや産業機器用)、Medical(健康・医療用)の「3つのM」領域の拡大に取り組む。経営計画2030ではモーターの周辺もユニット化して、高付加価値製品による「動き」のソリューション提供を目指している。
同社では、創業者が会社創立前の1947年に世界で初めて開発した、高性能馬蹄型マグネットモーターを起点に「小型・軽量」のノウハウを豊富に蓄積し、新製品開発に活かしている。モーターの制御技術も他社とは異なり、自社で開発しているのが強みだ。
アジア集中→世界5極へリスク分散。高い内製力による生産体制を実現
生産拠点は1964年の香港への進出を皮切りに、中国内の各地域に拠点を設け、1996年にはベトナムにも進出し、アジアにおける生産体制を確立した一方で、 2014年のメキシコ、2017年のポーランド進出により世界5極事業体制(日本、ASEAN、中国、欧州、米州)を完成。常務執行役員 技術統括 製造本部長の宮嶋和明氏は「各地域の需要に現地生産で応える地産地消により、輸送コストやCO₂排出量の低減に加えて、リスクヘッジを実現した」と話す。
生産体制は「3つの高い内製力が強み」(宮嶋氏)だ。1つめはモーターの部品生産からモーターの組み立てまでを自社で行う力、2つめは部品の金型や生産設備の設計から製造までを自社で行う力、3つめは製品の生産工程を自社で設計する力である。これらの高い内製力により、新製品を世界で生産する際に、どうすれば迅速かつ的確に実現できるかが即座にわかり、「品質、コスト面で最適な解を導くことが可能」(同)だという。幅広い分野で活躍する技術者により、この高い内製力が維持されている。
多彩な人材が活躍
宮嶋氏は、自社の風土を「枠がなく、楽しい仕事ができる」と話す。「枠がないと自由な発想が生まれる。現在の経営幹部自身が枠を飛び越えて楽しく仕事をしてきたから、仕事を本気で楽しもうと思っている人、自分から行動する人にはぴったりで、特にエンジニアには最高のフィールド」(同)という。
国際化が進む同社の人材制度は国籍や年齢、性別を問わず多様な人材の個性を生かす。トレーニー制度をはじめ、海外拠点との人材交流も盛んだ。入社1年目で技術系は5週間、事務系は1週間の海外研修を行う。また、異動希望申告制度や副業許可制度、通信教育受講制度などが整う。自らも小さい頃からモノづくりが好きで機械の開発に携わりたいと考えていた海瀬氏(ページ上写真右) は、「仕事のしやすい制度や環境が整っており、技術系の女性社員も増えている」と語る。
オートモーティブ第一事業部 第二製品開発部 海瀬 可南子氏
《わが社を語る》
■会社データ
所在地:千葉県松戸市松飛台430番地
拠点:本社、国内拠点3カ所、海外拠点22カ所 (2024年6月30日現在)
設立:1954年1月18日
代表者:高橋 徹
資本金:207億481万円(東証プライム上場)
売上高:1786億6300万円(連結/2023年12月期)
従業員数:(単体)893人、(連結)1万8859人(2024年6月30日現在)
事業内容:小型モーターの製造販売
https://www.mabuchi-motor.co.jp/
当社は、小型・軽量・高効率のモーターを様々な用途に提供し、豊かな生活や産業の発展に貢献してきました。2024年の創立70周年を機に実施した「当社らしさ」を聞く社員アンケートでは、「年齢を問わず幅広い仕事に挑戦できる」「技術にかける情熱」「家族のような温かさ」「真面目・誠実」などの言葉が並びました。こうした当社の強みを手に、経営理念「国際社会への貢献とその継続的拡大」のもと、移動体、産業機器、医療機器などの領域に、モーターをコアとした多様な「動き」のソリューションを提供すべく取り組んでいます。
また、製品をグローバルに安定供給するため、日本・アジアパシフィック・米州・欧州の各地域の拠点で、多様な人材が活躍しています。