・日本経済の成長とグローバル化の方向を先取りした迅速な経営決断と果敢な投資
・海外赴任の経験を積ませる研修制度や資格取得を支援する人材育成、従業員を大切にする健康経営の推進
株式会社ニチリンは自動車用・二輪車用の各種ホース及び配管部品を製造・販売する専門メーカーで、二輪車用ブレーキホースでは国内98%と圧倒的なシェアを握る。水道・温水洗浄便座用などの住宅関連ホースも手がける。2025年9月現在、海外9カ国13カ所に生産拠点を構え、高度な供給力と品質で自動車産業を支えている。大正時代、かつて「日本一の総合商社」と称された鈴木商店の事業会社から、自転車のタイヤチューブ部門が独立し誕生した。現在のJR姫路駅南側で製造を始め、1970年には姫路工場を現在地(姫路市別所町)に移転し、実質的な本社機能を置いている。
世界各地で生産、安全規制を先取りし シェア伸ばす
材料設計から配管部品も含む生産まで一貫体制を築き、高品質ホースを世界の顧客に供給できるのが強み。ブレーキホースは日本とスペインとベトナムの3工場で製造し、長さに換算すると毎月300万~400万メートルに達する。世界の主要な二輪車メーカーへ納める同ホースの生産量が最も多い。四輪車向けの同ホースも推定で世界シェア20~35%を占める。高度経済成長期から自動車メーカーの海外進出に呼応し中国・アジア・北米・欧州に工場を増やしてきた。曽我浩之社長は「1980年代後半に初の海外拠点としてマレーシアとカナダに進出した決断が、グローバル成長の起点になった」と振り返る。特に15年前からは、「大型二輪車に安全性の高いアンチロック・ブレーキシステム(ABS)の搭載」を義務づける規制が欧州から世界へ広がり、近年ではABSの装着が小型バイクにまで拡大している。ニチリンはこの規制に適用するブレーキホースで先駆け、シェアを伸ばしている。
カラーバリエーションを豊富に揃える二輪車用ブレーキホース
米国の同業買収、インドでは新工場を設立し グローバル化を加速
グローバル化の手は緩めない。2025年4月、米国で大型トラック・バスのホース・配管を製造するATCO PRODUCTS(アトコ・プロダクツ、テキサス州)を買収した。曽我社長は「両社の技術を融合しシナジー(相乗効果)を生み、大型車分野に本格参入したい」と意欲を示す。一方、人口が世界最大で自動車市場の拡大が著しいインドでは、2カ所目となる自動車用ホースの製造販売会社を2026年1月に設立し、稼働に向け準備中。サプライチェーン(供給網)の再編では、関税が上がっている米国での現地生産と日本の生産を増やし、関税の負担軽減に取り組む。
2024年7月姫路工場内に竣工したNICHIRIN WORKSHOP
外国人社員の採用拡大、 アジア・欧米系と多様化進む
ニチリンが伸び続けるカギは人材にある。海外でも活躍できる人材の育成に力を入れ、若手を約3カ月間、経験や人脈造りを目的に「海外トレーニー」として海外拠点へ送り出している。入社2年目で海外トレーニーとして派遣した例もある。曽我社長は「私自身海外で成長してきたので、海外希望者には早めに実現させたい」と強調する。外国人社員の採用も増やす。日本への留学生や海外在住の大学生、欧米子会社出身の契約社員と多様で、姫路工場では10カ国の人材が国際色豊かに働いている。TOEICで点数が一定水準以上であれば毎月、手当を支給する。同じ手当は機械、電気、エネルギー、品質管理、簿記、貿易などの資格取得者にも与える。また、まだ珍しい禁煙手当を支給しているほか、喫煙者は採用しない方針を打ち出している。
意欲を高め、キャリア形成を支援する目標管理制度も充実。2019年度から7年連続で「健康経営優良法人認定制度」企業に認定された。同制度の認定申請企業は増え、取得のハードルが高まっているものの、認定を連続でクリアしている。
EVの台頭に備え、 自動車と二輪車以外の顧客を開拓
自動車市場は世界で拡大しているが、電気自動車(EV)の台頭で必要な部品も一変しつつある。ブレーキが電動化するとホースの需要はある程度減るが、電動ブレーキは冠水時の安全性に不安があり、ホースはなくならないとみられている。一方でEVのバッテリー冷却に新たなホース需要が見込まれ、全体での増減は見通せない。ニチリンはこうした事業リスクに備え、主力のゴム製に代わる樹脂製ホースや、軽量性と耐久性に富むアルミ・ステンレス製配管などの開発に余念がない。曽我社長は「自動車や二輪車以外に配管を必要とする新たな顧客を獲得したい」と長期戦略を練る。
会社DATA
創立:1914(大正3)年5月
設立:1924(大正13)年3月
所在地:神戸市中央区江戸町98番地1
資本金:21億5,800万円(東証スタンダード上場)
従業員数:359名(2024年12月末現在)
事業内容:自動車用各種ホース、住宅関連ホース、同部品等の製造販売
URL:https://www.nichirin.co.jp/
研究・開発、購買、生産、販売等に携わる各々が責任と熱意を持って各自の仕事(モノ造り)に挑戦し、次工程(顧客)の信頼を勝ち得ることに喜びを感じる活動を行い、また企業として安定した利益をあげ続けることで従業員、株主に対する責任を果たし、同時に社会へ、そして環境への責任を認識することで21世紀に貢献できる企業を目指す。