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絞り加工を軸とする精密金属プレス加工技術で最先端産業に貢献【石崎プレス工業株式会社】

キラリ、企業ハッケン!

2024.01.11

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小型ボタン電池やリチウムイオン電池の実用化技術で飛躍

・服飾用ボタンから国内有数の薄板精密プレス加工へ昇華させた技術展開力
・一流の技術とともに信頼とCSR を重視する揺るぎない経営姿勢
 腕時計の革命とされたクォーツ式(水晶発振式)腕時計。駆動源をゼンマイから電池に置き換え、水晶振動子を発振させることで正確な時を刻む。このクォーツ式腕時計に搭載される小型ボタン電池(酸化銀電池)の陰極キャップの生産で飛躍を遂げたのが、石崎プレス工業株式会社だ。酸化銀電池の陰極キャップは外周のフチを外側に折り返す必要があるが、この加工に対し独自工法を開発し特許を取得。電子機器を中心に小型電池の採用が広がっていくなか、同工法の優位性による高い競争力により国内外の電池メーカーから次々と受注を獲得。以来、石崎プレス工業は、小型電池部品プレス加工のリーディングカンパニーとしての歴史を歩むことになる。
環境に恵まれた本社工場

環境に恵まれた本社工場

円筒型リチウムイオン電池 缶で圧倒的な世界シェア

 もともと同社は、1931(昭和6)年に日本初の服飾用スナップボタンメーカーとして創業し、自社ブランド「500番印」のスナップボタンは今なお生産継続中だ。スナップボタンの市場が縮小し始めると、トランジスタなどの電子機器分野にプレス部品の事業を広げ、これが1973年の酸化銀電池の陰極キャップの生産につながった。その後も同社の躍進は止まらない。ボタン電池から乾電池缶の深絞りプレス加工に手を広げ、1991年のソニーのリチウムイオン電池の登場で一段の飛躍を遂げることになる。「円筒型リチウムイオン電池がノートPCのバックアップ電源として使用され爆発的に伸びた時期、その深絞り缶は、当社が世界の圧倒的なシェアを占めていた」(石崎泰造専務)と言う。
 深絞り加工とは、一枚の金属の薄板から様々な形状の底付容器を作るプレス加工法。フライパンや鍋なども深絞りで作られるが、同社の深絞りは乾電池缶に代表される非常に薄い製品を作り出せる高度技術。わずか0.1-0.3mmの薄さの精密部品を手掛ける稀有な存在だ。しかも保有しているプレス機は、その殆どが絞り加工に使用できる仕様で、200台を超える。「規格要求の厳しい非常に薄い小物精密部品を、少ないバラツキで大量生産できるのが当社の強み」(同)と解説する。すでに深絞り加工は、小型ボタン電池の陰極キャップと並ぶ同社の主力事業となっており、シートベルトやエアバッグ、カーエアコン周りなどの自動車関連の部品も手掛ける。一昨年には薄さ0.1㎜程度のステンレスを素材とする円と楕円の組み合わせ形状の深絞り加工製品を受注。詳細は話せないそうだが、将来的にも有望な高付加価値製品を手中に収めた模様だ。
 売上の6割を直接取引に基づく海外売上が占めるグローバル対応力と、産学連携を軸にした技術高度化の取り組みも見逃せない。石崎隆造社長は、「事業を永続させるためにも、既存技術を深掘りするとともに、プレス加工技術の幅を広げていくことが欠かせない」と強調し、今年から大学の専門家を招いた勉強会を実施し、新たなプレス分野の挑戦を始めている。さらに、難易度が増す顧客技術ニーズへの対応力を高める金型設計製作に、3次元CAD/CAMを積極導入するとともに、経験値に頼る領域が多い深絞りへの成形シミュレーションを活用するなど、生産現場のデジタル化を推進。属人的なモノづくりから、ベテランの技術を承継できる態勢を整備しつつある。
薄板絞り加工品

薄板絞り加工品

9度目の優良申告法人表敬

 今後のカギを握るのが若い力。新入社員は全14部署を経験する研修を終えたのち、各新入社員にひとりの先輩社員が付くメンター制度で手厚い教育を受けられる。若い社員を中心にした社員の技術習得にも力を入れている。技能検定などの国家検定の取得を奨励しており、今年からは、合格した人が取得を目指す社員の教育係となるサイクルを掲げた。全社的な技術水準を底上げしていくのが狙いだが、なかでも技術継承等を目的とした全200本に及ぶ動画マニュアルは、ベテラン社員が重視する音や勘所を動画でわかりやすく再現した力作で、誰もがいつでも閲覧できる。最近は女性社員の活躍も目立ち、間接部門だけでなく金型プログラミング業務などに携わり、産休や育休で退社した社員は皆無だそうだ。
 「売り上げは顧客の信頼の総和」と語る石崎社長。顧客との信頼を経営の基本とし、また2021年には全法人の1割に満たないとされる9度目の税務署からの優良申告法人表敬を受けるなど、古くからCSR(企業の社会的責任)を重視してきた石崎ブレス工業。間もなく迎える創業100周年を超えて、永続し得る会社を目指している。
(左)製造現場
(右)学会技術開賞

《わが社を語る》

顧客と社会が喜び、社員が誇りを持てる会社づくり

顧客と社会が喜び、社員が誇りを持てる会社づくり

代表取締役社長 石崎 隆造氏

 今やモノづくりの世界は、QCD(品質、コスト、納期)を満たせば良いという時代ではありません。当社は、つねに挑戦を続け「一流を目指す」ことを経営方針に掲げていますが、謙虚に勉強し続け技術を磨くとともに、カーボンニュートラルをはじめとする環境保全の取り組みなど、CSRを徹底していくことが欠かせません。さらにデジタル化を推進し、人に依存しない新たなモノづくりを確立することも必要です。そして最も大事なのが顧客との信頼関係です。スナップボタンの顧客には創業時から90年続いている取引先もあります。最近は、そんな会社の考え方、人の育て方、顧客との付き合い方を聞いて納得して入社してくれる若い社員が増えています。今後も経営の軸をぶらさず、顧客に喜ばれ、社会に喜ばれ、社員が誇りを持てる会社づくりを続けて参ります。

■会社データ

所在地:兵庫県伊丹市森本1丁目98番地2
創業:1931(昭和6)年
設立:1933(昭和8)年2月1日
代表者:石崎 隆造
資本金:3,000万円
従業員数:197名(2023年5月現在)
事業内容: 精密金属プレス製品の製造(小型電池用部品、電子部品関連品、自動車関連
部品等)、服飾附属品の製造(500番印スナップボタン、つつみボタン「クロスシー」他)、精密金属プレス金型の設計、製作
http://www.ispress.co.jp/

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