三菱電機の先進応用開発センターは、幅広い技術領域をカバーする三菱電機の社内はもちろん社外からも要素技術を集め、より早く確実に解決策を提供する研究所だ。自動運転技術からフィジカルAIの研究へ進んだ若き技術者に「シゴト」を聞いた。
先進応用開発センターは、自動車機器開発センターを前身として2023年10月に発足、兵庫県姫路市と尼崎市に拠点を構える。自動運転や電気自動車向けに開発された様々なセンシング技術、制御技術に加え、AIやクラウドの応用ノウハウを活かすと共に、社外のパートナーとも連携して、より幅広い社会課題解決に向けた開発・ソリューションの提供を推進している。
今回お話をうかがったのは、フィジカルAIの開発に取り組む応用開発第四部の亀山陽平さんと、直属の上司であるグループマネージャーの竹原成晃さん。亀山さんは2021年に入社し、まずレーザー光で物体や周辺の状況を認識するLiDAR(ライダー)技術を主に担当、福井県の永平寺町で実施された国のレベル4自動運転の実証実験にも参加した。2025年からは研究分野を「認識」だけでなく「判断・制御」を加える研究に広げ、AI・ロボティクス分野を担当する。上司である竹原さんは、「フィジカルAIは世界的に開発競争が激しく進化のスピードが早い分野。亀山さんにはアジャイルの手法でどんどん試し、実際にシステムを構築して実機で検証するところまで任せています」と期待を寄せる。
応用開発第四部のグループマネージャーの竹原成晃さん(左)と亀山陽平さん(右)
試行錯誤して形にする積み重ねに面白さとやりがい
リケイ 亀山さんは大阪府立大学で電気電子を専攻されました。卒業研究はどんなテーマだったのですか?
亀山 光学計測と情報処理を組み合わせた画像再構築をテーマに、「マルチコアファイバを用いたシングルピクセルイメージング」について研究していました。マルチコアファイバは、一本の細い光ファイバーの中に複数の光の通り道を持つものです。その中を通る光を制御して対象物にさまざまなパターンの光を照射し、返ってくる光の強さを一つの受光素子で測定します。照射パターンを変えながら測定したデータを積み重ねることで、画像を再構成できます。
一本の細い光ファイバーで画像化できるため、内視鏡など狭い場所でのセンシングへの応用が期待されます。また、可視光以外の波長を使ったセンシングにも応用できるなど、幅広い用途が考えられます。学部から大学院まで同じ研究を続けました。
リケイ 就職先に三菱電機を選んだのはなぜですか?
亀山 大学での研究がとても楽しかったんです。新しい研究テーマを先生と一緒に試行錯誤しながら、少しずつ形にしていきました。研究の進め方を一から学ばせてもらい、自由に挑戦させてもらえたことは、今の自分の土台になっています。シミュレーションではうまくいくのに、実機ではさまざまなノイズや誤差があってうまくいかない。ひとつの技術を形にするまでには多くの工夫や地道な積み重ねがあることを実感し、ものを生み出してきた先人に尊敬の気持ちを持ちました。
就職してもセンサーやコンピュータを使って、周囲の世界を捉える技術に関わりながら、研究から実用化につながるところまで技術を形にしていきたいと考え、三菱電機を選びました。
リケイ 入社してクルマの自動運転の「目」を担当するのですから、希望通りですね。
亀山 LiDAR技術を担当しました。大学での研究が「センシング」寄りだったのに対し、「認識」の意味が大きくなってやりがいがありましたね。霧のなかでも対象を認識する技術などを研究し、国などが実施した福井県永平寺町でのレベル4自動運転の実証実験プロジェクトにも参加しました。お寺の参道の途中にある交差点をいかに安全に渡るか、道路側にもセンサーを設置する実験でした。入社2、3年目で総理大臣やメディアがたくさん来るようなプロジェクトに参加できて、面白かったです。
「入社2、3年目で大きなプロジェクトに参加できて、面白かった」と語る亀山さん