タカラベルモント株式会社は創業から百有余年の老舗企業で、「美しい人生を、かなえよう。」というパーパス(企業の社会的な存在価値や社会的意義)を掲げている。老舗と「美しい人生」の組み合わせは、どこか連想しにくく、違和感が漂う。しかし、「健康で社会に貢献する」という基本理念のもと、理美容・医療関連機器や化粧品・医薬部外品を長年、製造販売してきたのが同社だと知れば、違和感は雲散霧消する。
1921( 大正10) 年、大阪で鋳物工場として発足しマンホールや七輪を製造したのがタカラベルモントの原点となる。1923(大正12)年の関東大震災で壊滅的ダメージを受けた東京に、大量の七輪を供給し、東京の食を守ったというエピソードがある。
1931(昭和6)年、米国製理容椅子の部品づくりを手がけたのが今日につながる。部品から椅子本体の製造に発展し、販売実績を積み上げた。1956(昭和31)年には米国に進出し、ニューヨークに現地法人を設立、米国市場の開拓に乗り出す。ちなみに、日本の製造業では4番目の米国進出という。以後、欧州やアジアの市場を次々と開拓。今では現地法人が12カ国、販売実績は120カ国以上のグローバル企業に成長した。
理美容・医療向け機器や化粧品等を製造販売する老舗企業
・日本メーカーとして4 番目の早さで米国に進出、販売実績は世界120 カ国以上
・研究開発&生産部門の600 名余がモノづくりを支える
AI、IoTを駆使した製品も開発
現在の同社取扱品は、理美容サロンおよび歯科・眼科・産婦人科医院など医療向けの椅子、診察台、ユニットをはじめとする機器類と、頭髪化粧品や基礎化粧品をはじめとする各種化粧品・医薬部外品の二つに大別できる。その大半が自社製品で、研究開発に携わる100名余りと生産部門500名余の、合計600名強の社員がものづくりを支えている。
理美容向け機器の近況に目を向けると、最新のデジタル技術を駆使した新製品も世に出している。その代表例となるスマートデバイスミラー「エシラ」は、AI(人工知能) やIoT(モノのインターネット)により、鏡を通して、ヘアサロンの顧客とスタイリストが情報を共有し、最適なヘアスタイルに結び付けるといったものだ。
一方、医療向けでも創意工夫を凝らした機器の数々を製品化している。例えば、歯科医向けのコックピットのようなユニットチェアは、グローバル展開の強みとなっている。これはもともと、米国市場で販売していたが、好評だったため、日本に逆輸入したので、国内外で広く活用されている。
歯科向けではCT(コンピューター断層撮影)・画像診断装置といった医療機器類もラインアップし納入実績を伸ばしている。また、眼科医向けにも同様のユニットチェアや画像診断装置を提供するなど、広範なニーズに応えている。
(左)サロンビジネスの可能性を拡げる、AI搭載のスマートデバイスミラー
(右)経験・年齢問わず自由に意見が行き交う職場環境
基礎から応用まで幅広の研究開発が高品質を担保
化粧品のジャンルでは、40年以上にわたるヘアサロン専売品ブランド「ルベル」をはじめとする有力ブランド製品をいくつも展開中だ。B to B(対ビジネス)が基本なため、一般には馴染みが薄い面もあるが、業界では高品質ブランドとして広く深く浸透している。
高品質を担保するのが、毛髪科学や皮膚科学に関する基礎から応用までの幅広い研究開発である。研究成果の一例として、毛髪内部のメデュラ(毛髄質=鉛筆の芯のように髪の中心部にある組織)に白と黒の2種類があることを世界で初めて発見し、新発見を癖毛や白髪対策に生かす新基軸を発表している。
「当社の社員は自社ブランドや製品を誇りに思い、会社愛に溢れている」と冨谷明宣常務は胸を張る。パーパスとして打ち出している「美しい人生を、かなえよう。」の為せる業なのか。高水準を求められるプロフェッショナルユースの製品を取り扱っていること、経営者の人生に関わる事業展開、人のウェルビーイングに貢献していることが、誇りや会社愛につながっているようだ。
リクルート面では、新卒、中途を問わず広く募集中。技術系では、機械・電気・ソフトウェア、化学・薬学・農学・生物学をはじめ幅広い分野の人材を求めている。
《わが社を語る》
■会社データ
所在地:大阪市中央区東心斎橋2-1-1
創業:1921(大正10)年
設立:1951(昭和26)年
代表者:吉川 秀隆
資本金:3億円
従業員数:1,604名
事業内容: 理美容機器および関連機器、医療用機器、頭髪化粧品・基礎化粧品等の製造販売および輸出入、店舗・医院の設計・施工、エスティシャンおよびネイリスト養成
https://www.takarabelmont.co.jp/
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