板金・プレス加工、そしてリサイクルまで一貫対応
● 建機、産業用機器などほぼ全業種との取引
●企画提案型の鋼材販売・加工でユーザー企業を支援
株式会社キヨシゲは、日本の一大鋼材流通拠点である千葉県浦安市の浦安鉄鋼団地に本社を置く。1960年に鋼材スクラップのリサイクルから出発して62年。今では、産業用鋼材の販売、板金・プレス加工、溶接、リサイクルと1社で対応できる事業内容へと進化して付加価値を高めており、コンサルティング型事業でモノづくりのユーザー企業を支える存在となっている。
「ファブリケータ―と呼ばれる建設・建築用鉄骨会社とは住み分けている」(小林光德社長)と言う通り、棒鋼やH形鋼は扱っておらず、鋼板や山形鋼、溝形鋼、鋼管の扱いに集中している。なかでも板材の加工を主力としており、価格競争に陥りがちな鋼材流通よりも、加工によって付加価値を高めることに成功している。
2021年12月には群馬県内の厚板加工会社を傘下に収め、薄板から厚板まで板材の扱い品目を拡大。建設機械、舶用機器や半導体製造関連、鉄道車両関連へとユーザーの裾野を一挙に広げた。会社全部でコンサルティングサービスの精神に徹し、企画・提案型のユーザー企業サポート部隊としてサービスを提供することを心がける。1990年頃までは建築関係のユーザー企業が多かったというが、現在は、ほぼすべての業種と取引があり、トラック・トレーラー、建機、鉄道車両、軌道、農機などが主要な取引先で、かつ国内ユーザーとなっている。
(左)一大鋼材流通拠点の浦安鉄鋼団地に本社工場を構える
(右)社員出入口に国家資格取得者を掲示
国家資格である技能士資格 の取得を社員に奨励
鋼材加工に欠かせない板金加工機やレーザー加工機の操作には、訓練された技能と、精細な加工データの作成が伴う。このため、従業員には板金技能士などの国家資格の取得を奨励する。全社員100人という中で、1級・2級の板金加工技能士やタレットパンチプレス技能士の資格保持者は延べ約50人に上る。
新型コロナウイルス感染症の影響で、国内外の製造業が材料不足で悪戦苦闘する中、同社の業績は、いち早く持ち直し、2023年3月期は売上高94億円前後と最高を記録する見込み。さすがに、コロナ感染流行当初の2020年前半は大きく落ち込んだが、同年後半には、モノ不足の反動から来る大きな発注のうねりを捉えることに成功し、回復基調にめどを付けたという。小林社長は「スクラップも扱っている関係もあってか、鋼材市況の動きには会社全体が敏感な体質になっており、加えて、鋼材不足の中でも加工を手がけていることがユーザー企業に対して効果的に訴求できた」と振り返る。母材となる鋼材の仕入先との密接な関係も特徴で、母材・加工の両面での協力関係でユーザー企業を支援する。特にコロナ当初のモノ不足の状況を乗り切ることができたのは、この協力関係があったからだったという。
2005年頃からはベトナム人技能実習生を受け入れ、その人材のつながりからCAM用(工作機械を稼働させるNCプログラム)のデータは2017年に設立したホーチミン市のベトナム現地法人キヨシゲベトナム(KIVC)で作成する。現地法人の運営は現地の人に任せる半面、エンジニアとして日本国内でも約20人のベトナム人が活躍中だ。
(左)タッチパネル操作でベンダー機械を操る
(右)白熱した打合せの様子
技術・技能を備えた社員によるユーザー支援に一層力
理工系学生にとっては、学校で習得したスキルを生かせる点は大きな魅力。ベトナムで加工図面を設計しているが、国内の加工センターには司令塔となる設計部門があるため、学校で習得したCAD/CAMのスキルで加工プログラムを作る楽しさや、設計データを工作機械に転送してモノづくりそのものも喜びも実感できる職場だ。
高校卒、大学卒を含め、工場要員や営業要員を合わせて毎年5人は若手を確保していきたいとし、初任給の引き上げ、平均5か月分強の年間賞与など待遇面でも業界平均を上回る水準、有給休暇の80%以上取得実績、男性の育児休暇取得支援、短時間勤務制度といった取り組みで魅力アップに努めている。2023年春の入社予定者3人のうち、1人は女性。10年から20年先をにらんで計画的に人材を確保し育成していくことが将来のキヨシゲを支え、同時にユーザー企業を支えることにつながると確信している。
ユーザー企業に確かな提案ができるのは、技術と技能で裏打ちされた人材がいるからこそ。自主的な勉強会の支援のほか、ISO品質やISO環境、安全衛生、社内美化、ホームページ、DX推進などの社員による委員会活動があり、自らのアイデアで改善活動を推進する。「年齢、国籍、性別を問わず、有能な人材に活躍してもらうことが重要」(小林社長)とし、モノづくりのバックアップ部隊として、一層の発展を目指している。
≪わが社を語る≫
■会社データ
所在地:千葉県浦安市鉄鋼通り2-4-3
創業:1960(昭和35)年3月27日
代表者:小林 光德
資本金:5,000万円
従業員数:約100名
事業内容:鋼板・鋼材の加工・販売、スクラップ回収まで、企画提案による一貫対応
https://www.kiyoshige.com/
当社は、最終製品はつくっていません。納入先のユーザー企業のモノづくりに欠かせない素材を提供しています。素材として何を使い、どのように加工して納めれば、生産効率やコスト効率が良くなるのか。スクラップ回収や産業廃棄物収集運搬まで手がける業務内容は、昨今叫ばれるSDGsとも密接に関連しており、モノづくり全般にわたって、1社ですべてコンサルティング的な事業が展開できる珍しい存在だと考えています。多くの技能士の例からも理解していただけると思いますが、社員への教育体制は他社に負けません。加えて、有給休暇100%取得を目指し、9日間の長期連続休暇取得、社員旅行や各種社内イベントなど、福利厚生にもしっかり目を配っています。鋼材の「販売」「加工」「リサイクル」の事業の3本柱で産業界に貢献していることが、当社で働く人たちの自信と存在感につながっています。