●匠の技術と先端技術を融合させて自社製品を次々に生み出す技術開発力
●スマホから医療・エネルギー、次世代自動車まで多様なACF 接合の市場性
自社製品の開発を積極的に進めたのが前社長の大橋正義会長。大橋会長は、社長時代に「これまでの町工場は“待ち工場”。これからは自分の仕事は自分でつくる時代」と明言し、1970年代に大きく舵を切った。79年に初の自社製品「ターレットパンチプレス用特殊金型」を開発すると、84年には熱圧着装置の原型機の受託開発を機に機器事業をスタート。96年には、蓄積した熱圧着技術をもとに液晶ディスプレー(LCD)実装分野に参入。その後は、卓上型COG(チップ・オン・グラス)実装機、フルオートFOB(フィルム・オン・ボード)ラインなど、ACF接合技術による実装装置の品揃えを増やし、2007年にはスマートフォン・タブレット市場へ参入。これまでに世界450社、3500台以上の販売実績を誇るまでに成長した。2020年に父親からバトンを受けた大橋一道社長は、「自社製品を手がけ始めたころは、板金加工の稼ぎを注ぎ込むような日々が続いた」と、当時を振り返る。
同社の基礎を築いたメタル事業部では、OA機器、FA機器のほか、医療、健康、環境機器、アミューズメント機器など、小物から大物までの精密板金加工と、材料試験機などの自社製品も手掛ける。一方、機器事業部の柱であるACF実装装置はスマートフォン、カメラ、ICカード、光モジュール、ヘッドマウントディスプレイなど、IT関連製品の製造で広く用いられており、なかでもスマホは、ディスプレー、タッチセンサ、バックライト、指紋センサー、振動モーター、カメラモジュール、顔認証センサーなど多種多様なパーツでACFが用いられている。
現在、大橋製作所の屋台骨を担うACF躍進のきっかけも携帯端末。世界展開する欧州の有力メーカーに同社のACF実装装置が採用され、やがて中国、インド、メキシコなど各国の工場に次々に納入されていった。携帯からスマホへとシフトした今も、同社の装置は世界屈指のスマホメーカーで導入されている。最近は、ソーラパネルやスマートガスメーター、X線ディテクタ、調光フィルムといったエネルギー・医療・車載分野でも導入され始めた。さらにセンシングカメラやヒーターガラス、ディスプレーをはじめ車載用のニーズも増えており、将来的な自動運転に向けた新デバイスでも広く採用されることが見込まれる。同社ではACFの裾野のさらなる広がりを見越し、ここへきて、確立した技術を特許で守る特許戦略も強化している。
また、働きやすい職場環境づくりも進めており、2020年11月から「健康優良企業銀」認定を継続取得しているほか、仕事と介護を両立できる職場環境の整備促進に取り組んでいる企業として、厚生労働省が定めるシンボルマーク「トモニン」を取得済み。「以前から産学連携には力を入れていて大学との共同研究も進めている。ここ数年は、毎年新卒採用が出来ているが、営業職/開発・設計職/製造職などで新たな若い力の参加を期待している」(大橋社長)。脱・待ち工場を成し遂げ、世界的なACF実装装置メーカーとなった同社には、今後も挑戦と活躍できる舞台が大きく広がっている。
所在地:東京都大田区大森南3-1-10
創業:1916年
設立:1959年8月
代表者:大橋一道
資本金:9600万円
社員数:89人(2023年4月1日現在)
事業内容: ACF実装装置、各種試験機、自動化機器、健康・運動関連機器、数学オブ
ジェの製造販売および精密板金加工
https://www.ohashi-engineering.co.jp/index.html
板金加工から始まって、装置メーカーへと転身。今では売り上げの90%を機器事業が占めており、脱下請けを果たしました。主力のACF実装装置のほか、板金加工から派生した試験機、自動化機器の類いや、健康と運動をテーマにした製品群をラインアップしています。
社員は100人足らずの規模ですが、少数精鋭、筋肉質な企業を目指しています。また、新しいことへのチャレンジを重視して積極的に支援しています。チャレンジし変化していくことができる企業にしか成長は無いと考えるからです。
社員の育成に関しては、個人目標シートにより、どうキャリアアップするか、方向性を共有するようにしています。ユニークで個性豊かな人たちが
真面目に働いている会社です。