「お客さまのニーズに食らいつき、形にする力」で成長するイノベーション企業【ワッティー株式会社】
ワッティー株式会社はヒータと 創業50周年記念式典の集合写真 五反田にある自社ビル本社センサの専業メーカー。フロートスイッチを始めとする液面レベルセンサや、ポリイミドヒータといった面状発熱体、高精度ホットプレートなどを開発・製造・販売している。
同社は1967(昭和42)年に、前身の商社として産声を上げた。当初は防災機器の卸販売を手がけていたが、その後は電熱器(ヒータ)と温度制御機器などの取り扱いも始める。創業者の清水美知雄氏は自身がヒータメーカーで設計・営業の仕事に従事したこともあって、いずれメーカーに転換しようと考えていたという。その機会は思わぬ形でやって来た。
バブル崩壊後の「商社はずし」をテコに製造業への転換果たす
●後発メーカーながら、大手が真似できない独自の技術力を磨いて差別化に成功
●業務スキルだけでなく、「人間力」も重視した人材育成システム
「商社外し」の大ピンチをチャンスに
バブル経済の崩壊で、96年に顧客がコスト削減のために商社を外してメーカーと直取引をするケースが相次いだのだ。メーカー側も少しでも高く売ろうと直売化に踏み切り、代理店制度を廃止する動きが出てきた。さらに製品を仕入れていたメーカーの経営不振で、納品先の顧客が困る事態も多発。供給責任を果たすためには、製品を自社で作るしかない。
97年4月に株式会社ワッティーを設立し、ヒータをはじめとする半導体製造装置向けの機器製造事業へ参入することにした。しかし、いきなり製品づくりを始めたわけではない。98年4月にスピンアウトしたエンジニア3人を採用して相模原技術センター(相模原市) を開設。99年にはメーカーの社員を一部雇用してセンサ事業部を立ち上げた。先行するメーカーが量産している製品をつくっても、顧客には切り替えるメリットがない。「顧客ニーズはあるが世の中にないものをいかに具現化できるか」(菅波希衣子社長)がカギになると考えたのだ。
より良い製品づくりのために、ワッティーはエンジニアが顧客の現場に足を運び、求められる技術について話し合い、一緒に開発することにした。これは新たに始めたことではない。商社時代にも仕入先メーカーの技術者と顧客の現場に入り、共同プロジェクトで製品開発に取り組む「技術営業」は当たり前だった。要は商社だった
同社がメーカーに置き換わっただけだ。商社時代の同社では営業社員に「調達の窓口になる購買部ではなく、設計部か開発部へ足を運べ」と指導していたという。
現場の「やりたい」を最大限に尊重する社風
菅波社長は「ヒトもカネも限られるため、ある程度の選択と集中が必要だが、事業部がやりたいということはできるだけやらせるようにしている」と話す。そのためには社内コミュニケーションの円滑化が欠かせない。社長自ら社員全員の日報に目を通し、職場の現状と課題を把握するようにしている。さらに年3回の個人面談を実施して、仕事への思いや希望を直接聴き、相談にものるという。菅波社長は「一緒にやってみよう」という視点での対話を心がけている。
ワッティーは顧客と社員がそれぞれ「こうありたい」ニーズとシーズを一致させ、ユーザーに満足してもらえる製品を提供できる会社を目指す。その一環として、人材育成に力を入れている。中でもユニークなのが「人間力向上支援金制度」。仕事に関係なく、新しいことにチャレンジする社員を支援している。内容は英会話や楽器、ダイエットなど何でもよく、費用の半額、最大10万円まで支給する制度だ。「チャレンジを始める」ことが目的だから、成果も求めない。
なぜ仕事と関係ないことに会社が支援をするのか?そこには「会社をつくるのは社員」との理念がある。仕事のスキルだけでなく、人間としての厚み(人間力)がなければ、会社の厚みも出ないからだ。高付加価値製品を提供するためには社員のモチベーションも重要。併せてベースアップを実施して社員への還元を進めるほか、社員食堂代わりに100円で果物や冷凍食品を提供するなど、社員の福利厚生も充実。職場満足度の向上に取り組む。
一緒に働く上で年齢、性別、国籍といった境界線はないとの信念の下、多様な意見や価値観を受け入れて、いつでも、どこでも、何でも、誰にでも、喜びや感動を与えられる「Deligh Top」の実現を目指す。
《わが社を語る》
■会社データ
所在地:東京都品川区西五反田7-18-2 ワッティー本社ビル
創業:1967(昭和42)年10月1日
設立:1968(昭和43)年5月23日
代表者:菅波 希衣子
資本金:9,500万円
従業員数:177人(2023年3月末現在)
事業内容: 防犯・防災機器販売、半導体製造装置用ヒータユニット及び各種センサの開
発製造販売
https://watty.co.jp
他社に断られた案件でも「できる」「できない」はさておいて、先ずは「やってみます」と手を挙げる。それがワッティーのポリシーです。顧客のオーダーに一つひとつお応えすることで培われた信用や信頼があって、「一緒にこういう製品が作れないか」とのオーダーを頂けるようになりました。顧客からの難しい要望に必死に食らいついて期待に応えることで技術力を高める。心から顧客に育てていただいている会社だと思っています。大手メーカーが既存のラインや人員を割いてまで参入するメリットがないニッチの領域で、他社が模倣できないレベルまで独自の技術を高め、量産化に成功しています。ここにワッティーの「強み」があると確信しています。