建設資材「あと施工アンカー」で成長・発展中【サンコーテクノ株式会社】
「ファスニング」とは、ファスナーの類似語で、締めること・留めることを意味する。このファスニング関連製品の取り扱いで右肩上がりの成長・発展を続けているのがサンコーテクノ株式会社である。具体的には「あと施工アン
カー」という建設資材を、開発・製造・販売・施工・調査試験の一貫システムにより供給し、国内はもとより、海外市場も開拓している。
あと施工アンカーとは、その名の通り、建物の上屋などが出来上がったあとに部材や器具を取り付けるためにコンクリート等に打つアンカー(ねじ、釘の類い)を指す。あと施工のため、ナットでボルトを固定するような作業は難しく、固定するための工夫が求められる。
グレゴリー・ペック主演の映画「白鯨」は、巨大な白クジラと捕鯨船の船長の闘いを描いている。映画では、クジラに刺さった銛(もり)が抜けないように、銛の先端が開くシーンがある。同社創業メンバーの一人が「白鯨」を観ていて、そのシーンに遭遇した時、思いがけず「これだ」とひらめいた。打ち込んだアンカーの先端部分が拡がれば頑丈に固定できる、という連想だ。
インフラ補強など土木分野に照準
●独創的製品がトップシェアを維持
●開発・製造・販売・施工の一貫システムで市場を席巻
特許が切れても売れ続ける
ひらめきは正解だった。拡がるアンカー=「オールアンカー」として商品化され、大好評を博した。特許(期間20年)が切れて競合品が出回っている今でも売れ続けている。同社では、オールアンカーのほかにも多種多様な独創的アンカーを開発し市場を席巻。数十社が競う「あと施工アンカー」市場で約40% のトップシェアを誇っている。
もともと建築関係の需要が主体であったが、ここへきて土木関連が大きく伸びている。道路、橋、トンネルをはじめとする日本の社会インフラは老朽化が進み、耐用年数を迎えているものも少なくない。新設から維持保全へ、コンクリート構造物も最近では補強・改修で対応するケースが数多い。そうした補強・改修にうってつけなのが「あと施工アンカー」なのだ。
洞下英人社長は「橋の柱を太くする、駅舎を改修する、地下鉄のトンネルを補強するなど、さまざまな用途で使われている」と需要の広がりを説明する。今後も社会インフラの大規模改修が相次ぐのは必至なことから、同社では、土木・インフラ関連を重点市場と見定めて、その掘り起こしにさらに力を入れていく。
同社の特徴の一つとして、早くから海外に進出しグローバル展開を進めていることが挙げられよう。30年ほど前、タイに販売・製造拠点を開設したほか、ベトナムや台湾に販売拠点を設置し、各国市場を開拓している。洞下社長は「将来的にはアジアに続き欧米市場にも進出する」と、世界市場の開拓を視野に入れている。
(左)ファスニング事業製品群
(右)芯棒を打ち込むことにより、先端部が拡張する「あと施工アンカー」
第2の柱を支える人財と採用
大黒柱の「あと施工アンカー」に続く第2の柱となるのが、紫外線硬化型FRP(繊維強化プラスチック)シートや呼気アルコール検知器などの製品群で構成される「機能材事業」だ。自由自在に曲がる紫外線硬化型FRPシートは、紫外線を当てると硬化するシート状の製品。浴槽やプレジャーボート、クルマのバンパー補修や、ガソリンスタンドに埋没しているタンク補修、さらには歩道橋といった公共設備の長寿命化などにも使われている。呼気アルコール検知器は、2011年から運送業や旅客鉄道業(いわゆる緑ナンバー)向けにアルコールチェックが義務づけられる中で、最近急速に採用実績を伸ばしている製品だ。今後、「安全運転管理者」を設置する企業(白ナンバー)も義務づけが決定しており、需要の広がりが期待されている。
リクルートでは新卒、中途の両方の採用に力を入れており、特に技術系の新卒人財を広く募集している。技術研究所では開発技術者を、ファスニング本部やエンジニアリング本部ではセールスエンジニアを必要としている。こうした人財育成は一朝一夕に行えるものではないことから、新卒からコツコツ育て上げることを重視している。
一方でダイバーシティにも目を配り、女性や外国人の採用も積極的に行っている。女性に関しては、全社員のうち3割を占めている。もともと男社会の業界であったが、この5年ほどで急激に変化しているという。産休・育休後の復職支援や子育て支援などはもちろん、社内に設けた女性活躍推進協議会では各拠点とのWEB交流会などを行っており、会社全体で働きやすい環境づくりに取り組んいる。
(左)横断歩道橋補修にも使われる紫外線硬化型FRPシート「e-シート」
(右)創造提案型企業の研究開発体制を支える「ものつくりテクニカルセンター」
≪わが社を語る≫
■会社データ
本社所在地:千葉県流山市南流山三丁目10番地16
設立:1964(昭和39)年5月
代表者:洞下(ほらげ)英人
資本金:7億6,800万円(東証スタンダード上場)
社員数:(単独)342人 (連結)622人(2023年3月31日現在)
事業内容: 建設資材(あと施工アンカー・ドリルビット・ファスナー等)、複合材、
各種測定器の企画開発・製造・販売・施工および輸出入
https://sanko-techno.co.jp/
企業は環境適応業であり、時代に適応することが大切です。
これから先はリニア新幹線や大阪万博があり、大規模改修案件もたくさん出てきます。また、トルコ地震を受けて世界中で耐震補強の需要が膨らむでしょう。先を見て、何を準備したらいいかを考え、どうすればよいのかを提案する『創造提案型企業』が、当社の理念です。
社名のサンコーは「社会と会社と社員の三つの幸せ」=三幸に由来します。毛利元就の「3本の矢」や、正三角形の安定感が示すように、3は神秘的な数字。当社ではバランスを重視しており、目下、機能材事業に続く第3の柱を模索しているところです。