“広く”と“深く”
米持さんの業務は、現在から将来的な市場ニーズを予測し、これを念頭にシートのコンセプトづくりから製品化まで関わる全体進行管理。いち製品開発を俯瞰する形でありながらも、自ら図面を引くこともあるし、製品化に向けた試作発注、その製品評価や特許出願にも関わるなど、シートに関する“広い”視野と製品に関する知見の引き出しの多さが求められる立場と言える。
環境配慮コンセプトシートは、持続可能な社会への取り組みが求められる市場環境を前に、自動車産業の製造から廃棄までのサイクルにおける課題を解決する一つの策として世に提示した開発品だ。
鈴木さんの業務は、シート開発に不可欠な製品評価の「ものさし」づくり。例えば、自動車に乗る際、一定数の人々を悩ませるのが「乗り物酔い」。これまで「乗り物酔い」の要因は、様々な専門家から諸説挙げられてきたものの、それらの評価手法・数値化する取り組みは、実は乏しかった。こうした要因の評価手法を確立し、製品構造等に反映させていくために、国内外の学会での情報収集や自らの研究成果の発表を行うなど、徹底的にひとつのことを突き詰め、“深掘り”していくことが求められる立場だ。
「評価指標の策定のため、社内で乗り物酔いをしやすい人々を募り、何人もの人が協力を申し出てくれました。」と語る鈴木さん。周囲のバックアップで評価指標、そして開発品完成につながる
そんなお二人だが、「大学時代は、『広く・浅く』学んできました。電気とか機械とか・・・」(鈴木さん・米持さん)と謙遜しながら語る。ともに、大学を卒業後、ニッパツに就職しており、自動車については学生時代から関心が高かった。
「大学時代は、レーシングカーの企画から設計、製造まで全てに携わる『学生フォーミュラ』に参加していました。学びを重ねる中で人間工学に興味が出てきたのとリンクして、人がいちばん接するシートに関連する仕事がしたいと考えるようになりました。」(鈴木さん)
「周囲から『自動車開発にしっかり関わることができるのは、実は完成車メーカーより部品メーカーだよ』と聞き、部品メーカーの中でも内装系を重点的に見ました。シートは、より『人』に近い製品である点が魅力的でした。」(米持さん)