有水さんはなぜ原子核物理学をやろうと思われたのですか?
有水さん
ダーク・ファンタジー漫画の『鋼の錬金術師』をご存知ですか? 中学生の頃に読んで錬金術師に憧れ、原子核の陽子と中性子の数を変えちゃえば金ができるのではと思ったのが、原子核物理に興味を持ったきかっけです。原子核物理学には理論系の研究と実験系の研究があり、私は実験系でした。装置を動かして理論と一致するデータが出てくると『物理やってるぞ!』という感じで楽しかったです。J-PARCは世界最高レベルの大強度陽子ビームを扱う施設ですからね。大規模な装置に囲まれてワクワクしました。
吉村さん
私はコンピュータサイエンスに憧れて工学部の情報学科に入りました。数理工学の専攻で、さまざまな現象をモデル化して解析すると、世の中の現象の説明がつく。例えば人のネットワークの上で情報がどのように拡散するのかとか、ウイルスがどう伝播していくのかとかの振る舞いを解析していました。実世界の現象をモデル化する学問なので、実世界への応用を目指すいまの仕事につながりました。
就職後も大学での研究テーマを続けたい、という研究者は多いですね。
吉村さん
大学時代からもっと実世界への応用を意識した研究をやりたいと考えていました。数理工学はさまざまなドメイン(分野・領域)の現象をモデル化できる技術なので、総合電機のような多岐にわたるドメインがある会社に興味を持ちました。
有水さん
僕は学生時代は実社会への実装なんて意識は全くなくて(笑。理学部ってそういう人、多いですよね。僕が面白いからやっているんであって、何の役に立つのと聞かれても困っちゃうみたいな。でも修士になって世の中を見ていると、自分の興味だけでは限界があるのかなと。やっぱり人間社会で生きていく以上、誰かの役に立って、その相互作用で人とつながることが必要だと思いました。そこから就職を考え、自分にとって面白く、かつ社会に役立つ仕事として総合電機メーカーの研究職を目指しました。